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「世界初!ろう者クライマーエベレストへの挑戦」 田村聡さん

2016.02.24

田村 聡(たむら さとし)さんは、ろう者(聴覚障がい者)のクライマーだ。
山好きの父と叔父の影響で13歳から登山を始めた田村さんは、北アルプスの山々を登り、クライミングの経験を積んでいった。高校生の時に「北壁から世界初の登頂 チョモランマまた日本隊快挙」と書かれた新聞の見出しを見てから「エベレストに挑戦する」という夢を描くようになった。
20代30代に登山と山スキーの技術を磨いた田村さんは、37歳で モンブラン(4,810m) 登頂 、42歳の時に ヒマラヤ アイランド・ピーク(6,160m) 登頂、そして、同年にヒマラヤ チョ・オユー(8,201m) を登頂し、ろう者で初の8,000m級登山を成功させる。
ヒマラヤ チョ・オユーの登山で一緒に登ったシェルパから「あなたは強い。あのエベレストに挑戦するといい。」とお墨付きをもらった田村さんは、2014年5月に念願のエベレスト登頂に挑戦する。
エベレストの高さは8,848m。その年は例年にない気候変動で絶えず強風に襲われながらの登山となり、 第1回目のエベレスト挑戦は強風の影響よりで、標高7,950mで撤退と言う苦渋の決断をすることになった。
しかし、翌年の2015年4月に田村さんは2度目のエベレスト登頂に挑戦する。
4月25日、チベット側のエベレスト北面・標高6,300mにいた田村さんが感じた小さな揺れ。 「どこかで崩落か雪崩が起きたのか?」と思った途端、続いて非常に大きな揺れが起きた。ネパール大地震だ。
幸い、田村さんがいた北面のルートでは特に目立った損壊はなかったものの、中国政府から登山中止の通達があり、力を発揮する間もなく2度目の登頂も断念することとなった。

田村さん
「耳が聞こえなくても健聴者でも、その危険度は同じです。しかし、聞こえない私は音の判断ができません。 例えば、遠くで崩れる大規模な雪崩も私には聞こえません。
耳をつん裂く様な雷鳴が轟いても私には聞こえません。
さらに、秒速で襲ってくるかまいたちも瞬時に変わる風向きを聞いて判断する事ができません。
目でよく観察し、第六感にも頼らなくてはなりません。 注意深く行動しなければならないのです。」

「耳が聞こえない私が登頂することで、困難に挑む勇気と夢を持つことの大切さを世の中へ伝えることができます。」

2度の登頂断念により資金面でも苦しい状況が続いているが、田村さんは、3度エベレストへの挑戦を目指している。ろう者によるエベレスト登頂は世界でまだ誰も達成していない。
高校生の時に描いた夢を今でも追い続ける50歳のろう者クライマーの挑戦はまだまだ続いている。

クラウドファンディングサイト「Motion Gallery」の田村さんのページ
■田村聡さんプロフィール
1965年 東京都生まれのろう者(聴覚障害者)、山好きの父と叔父からの影響で、13歳から登山を始め、北アルプスの山々を登り、クライミングの経験を重ね、現在登山歴37年。国内山行1000回以上。夏山、冬山を問わず、山をフィールドに活動する山岳アスリート。登山以外では世界一過酷なレースと言われるパリ・ダカールラリー二輪出場、国内ラリーレース入賞数回、オリエンテーリングアジア大会M45クラス優勝など。特技は山スキー、トレイルラン、アイスクライミング

■障がい者によるエベレスト登頂の歴史
・1998年 史上初の義足者による登頂 トム・ホイッテーカー(イギリス)
・2001年 史上初の全盲者による登頂 エリック・ヴァイエンマイヤー(アメリカ)
・2006年 史上初の両足義足者による登頂 マーク・イングリス(ニュージーランド)
・2013年 義足者による登頂、女性初 アルニマ・シンハ(インド)