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「見えない壁だって、超えられる。」モンキーマジック小林代表講演会

2016.07.28

2016年6月29日、神奈川県藤沢市にてモンキーマジック(視覚障がい者クライミング)の小林代表による、講演会が開催され、約50名が参加した。
当サイト「チャレアス」では、過去にもモンキーマジックの特集記事を掲載している。
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○クライミングとの出会い
小林代表は視覚障がい者であり、国際大会でも活躍をするトップクラスの障がい者クライマーだ。
講演会冒頭では、小林代表がアメリカで行われた障がい者クライミングのコンペに参加した際のドキュメンタリーが放映された。スタート地点にいるガイドスタッフにホールド(手足を載せる体を支える突起物)の方向を聞きながら、10m以上の壁を登る姿は、まるで目が見えているかのようだった。
颯爽と登る姿、そして鍛え上げられた筋肉からは想像できないが、意外にも少年期はスポーツが苦手だったそうだ。小林代表がクライミングと出会ったのは、視覚障がいを抱える前の高校2年生の時。
「偶然見かけたクライミングの本を読み、興味を持った。自然の中で過ごす楽しさ、自分のペースで壁と向き合うクライミングの世界に夢中になった。社会人となってからも、車で郊外へ出かけ自然の岩を登っていた。仕事をしている間、土日がとても待ち遠しく感じた笑」
○出口の見えないトンネルと、2つの転機
明るい未来予想図を想像していた小林代表に、視覚障がいという壁が現れたのは20代後半の時。
「医師から近い将来盲目になると宣告を受けた時は、出口の見えないトンネルから置いてけぼりになった感覚がした。」
あらゆる病院に出向くも、治療方法はないと言われ続けた。そんな折、人生を大きく変える2つの転機があった。
1つ目は、当時訪れた病院のケースワーカーと出会ったこと。
自放自棄になっていた小林代表は、ケースワーカーに「これから何が出来なくなるのか、将来盲目になる前にどんな準備をすればいいのか」と問うた時、ケースワーカーは、「出来なくなることを考えるのではなく、あなたが何をしたいのか、どう生きたいのかを考えるべき」と教えた。
そして2つ目は、全盲の登山者と出会ったこと。
アメリカに全盲でエベレストを登頂した人がいると聞き、大きな衝撃を受けた。すぐにメールを送り、アメリカに渡米し本人と一緒にクライミングをした。
当時を振り返り、「これまで人生を諦めかけていたが、『自分だから出来ること』を見つけていこうという考えに変わった。2つの出会いがトンネルの出口を教えてくれた。」と小林代表は語った。
○障がい者とクライミング
障がい者クライミングを普及することが、『自分だから出来ること』の一つだという想いを持ち、あらゆるジムに出向き障がい者クライミング導入を勧めたが、ほとんどのジムは、「クライミングは障がい者には危険だから導入はしない」との答えだった。
しかし、クライミングは障がい者でも安全である、と小林代表は言う。
「例えば視覚障がい者は、ボルタリングのルール上、体をロープで繋がれるため、動ける範囲が明確になり安心感が生まれ自由に動けることが出来る。さらに落下をした際もマットがあることによって、安全も担保されている。」
安全性だけではなく、自分のペースで同じ壁を登り、新たな自信と可能性をもたらしてくれることが障がい者クライミングの魅力だ、とも語った。

○見えない壁もいつか超えられる
「クライミングは誰でも何度も何度も失敗する。それでもチャレンジし続けるのは、いつかこの壁を登れるという希望があるから。希望を常に持っていれば、『見えない壁』だっていつか超えられる。」
小林代表は、障がい者と障がいを持たない人との交流型クライミングイベントを実施したり、アフリカの盲学校支援をする等、障がい者クライミングの普及だけではなく、障がいの枠を超えて多様性を認め合う社会を作るため、活動を続けている。

『見えない壁』を作るのは自分自身。それを超えるためには、自分と向き合い自ら行動することが大事である。障がいを持つ人と障がいを持たない人の『見えない壁』もいつかなくなれば、そんな小林代表の想いが一人でも多く届くことを願ってやまない。

NPO法人モンキーマジック
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