「魅了満載の茨城県、国際盲人マラソン2017」

2017.04.18

 茨城県と千葉県にまたがる湖、霞ケ浦。普段は穏やかなこの地域に、猪木コールが響き渡っていた。

 「猪木!ボンバイエ!猪木!ボンバイエ!」
 「1、2、3、完走ダーー!」人々が腕を突き上げる。

 猪木コールの正体は、あのアントニオ猪木さん。ではなく…。地元、茨城県かすみがうら市出身のモノマネ芸人、アントキの猪木さんだ。かすみがうらマラソン2017兼国際盲人マラソン2017のスタート前の一幕であった。

 4月16日(日)、快晴の中、かすみがうらマラソンは開催された。
 スタート時の気温は20.8度。強い日差しもあいまって、選手にとっては暑い中のレースとなった。しかし、集まった19,594人のランナーの熱気はそれ以上に熱かった。

 今年で第27回目、世界30の国と地域、国内47都道府県からのエントリーがあった本大会。マラソンブームが到来する前から、続く人気の大会だ。
 その人気の秘訣は、霞ヶ浦のほとりの自然豊かなコースはもちろんのこと、都内から電車で乗り換えなしで、来ることができるアクセスの良さもその1つだ。スタート時間は、フルマラソンの部で10時と、他のマラソン大会と比べて遅めに設定されている。近年、人気の都市型マラソン大会はスタート時間が早いため、宿泊しなければ参加できないことが多い。日帰りで参加でき、参加料も6,000円(フルマラソン)と比較的安めに設定されている本大会は、非常に良心的な大会に感じる。
 かすみがうらマラソンには、国際盲人マラソン大会が併催されており、146名の視覚障害のある選手もエントリーしていた。
 1995年の第5回大会から「全国盲人マラソン大会」を併催し、大きな反響を呼んだ。第6回大会からは「世界盲人マラソン大会」が併催され、以降IBSA(国際視覚障害者スポーツ協会)公認の盲人マラソン大会となった。
 また、2009年の第19回大会からは車いすの部も作られた。こちらは障害のない人も、車いすに乗れば参加できる数少ない大会となっている。今回は6名の車椅子選手がエントリーしていた。

 各車いすランナーには、自転車に乗ったサポートライダーが並走し、そのサポートにあたる。パラリンピックに参加するレベルの車いすランナーは、鋼のように鍛え上げられた肉体で、最高速度50km近い速さで42.195kmを駆け抜ける。しかし、車椅子に乗っている人全てが、アスリートのように鍛えられているわけではない。下半身に麻痺系の障害のある人は、排尿のためのカテーテル(医療用の管)をお腹に通していることが多い。そのため、長時間の前傾姿勢に不安を感じる人もいるようだ。さらには、レース中の車椅子の転倒や、スピードの出し過ぎによる思わぬトラブルの不安もつきまとう。そんな不安を少しでも軽くし、大会の安全な運営を図るために、サポートライダーがいるのだ。今年のサポートライダーには、2016年リオデジャネイロパラリンピック銀メダリストの藤田征樹さんの姿もあった。
 車椅子の部で優勝したのは佐藤健選手。盲人マラソンのB-1クラス優勝は加治佐博昭選手。両選手はともに今回がフルマラソン初タイトル。

 佐藤選手は試合後「前半から(とばして)いこうと思っていた。アップダウンが多いのは分かっていたが後半ペースダウンしてしまった。」とレースを振り返った。ベストは出なかったが、3年後の東京パラリンピック出場への決意を新たにした。

 盲人マラソン優勝の加治佐選手は栃木県在住。北京パラリンピックに日本代表として出場した経験を持つ。伴走者は北村拓也さん(20kmまで)と豊島聡さん(20km以降)だ。
 豊島さんは加治佐選手と同じ栃木県に住むが、北村さんの住まいは山口県。住まいの距離が離れているので、一緒に練習することは容易でないようだが、加治佐選手曰く「一度、自転車に乗れたら後は簡単に乗れるように、伴走も一度タイミングを合わせれば、あとはうまくいく」とのことだ。
とはいっても、加治佐選手のゴールタイムは2時間57分11秒。かなりの速さだ。豊島さんと、北村さんの日々の努力があっての信頼関係なのだろう。本大会では、選手と同じように日々練習に励む伴走者の栄誉を讃えて、選手と同じように表彰を行っている。
(text & photo by はちみつ)

 車いすの部と盲人マラソンの大会結果は以下の通りである。

【フルマラソンの部】
車椅子の部 優勝 佐藤 健   1時間48分12秒
男子(B-1)優勝 加治佐博昭 2時間57分11秒(伴走者:北村拓也、豊島聡)
女子(B-1)優勝 井内菜津美 3時間40分02秒(伴走者:寺山典孝)
男子(B-2)優勝 池永敦  2時間58分59秒
女子(B-2)優勝 青木洋子  3時間29分31秒(伴走者:岩原宏司、山田優斗)
男子(B-3)優勝 高井俊治  3時間27分56秒

【10マイルの部】
男子(B-1)優勝 米岡聡  1時間02分38秒(伴走者:奥村直樹)
女子(B-1)優勝 北牧希羊子 1時間28分48秒(伴走者:杉山隆)
男子(B-2)優勝 岡村正広 58分11秒
女子(B-2)優勝 國井康世  1時間34分36秒(伴走者:阪下竜也)
男子(B-3)優勝 大竹等  1時間09分42秒
女子(B-3)優勝 大竹美智子 1時間37分44秒

【5kmの部】
男子(B-1)優勝 三上直人  23分22秒(伴走者:伊藤一則)
女子(B-1)優勝 高澤節子  30分03秒(伴走者:山崎ひろみ)
男子(B-2)優勝 菊島昌保  20分31秒
女子(B-2)優勝 生井レイ子 34分09秒(特別伴走:市河麻由美)
男子(B-3)優勝 秋葉茂  20分37秒