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「選手と共に」第33回全日本視覚障害者柔道大会

2018.12.23

2018年12月23日(日)、講道館新館大道場にて、第33回全日本視覚障害者柔道大会が行われた。本大会の成績は、来年度の強化指定選手や国際大会派遣の参考となり、選手らにとっては今年を締めくくり、また来年に向け好スタートを切るための一つの重要な試合だ。

開会式では黙祷、国歌斉唱が行われ、日本の国技として慣習にならった厳かな雰囲気が漂っていた。また会場には、白い柔道着を着た選手の2倍、3倍はいるであろうスーツに身を包んだ審判や補助委員の数である。

個人戦は予選リーグ・決勝リーグに分かれ、第1試合場/第2試合場ごとに、終えた順から次の対戦へと移っていく。特に第2試合場での第1試合(本稿敬称略:藤本聰 対 廣瀬誠)は4分では決着がつかず延長へ。一方隣の第1試合場では、第10試合まで進行。実に延長戦6分以上。視覚障害者柔道の特性として、「組んだ状態」から始まるこの競技、一秒も選手たちは休むことができない状況での延長含め10分の体力的なきつさ。本戦いを制したのは、藤本であった。さすがは両者とも4大会以上パラリンピックに出場している強者だ。
試合の中で繰り広げられる技は多彩、組んで始まるからこそ、一本も決まりやすい。48kg級に出場の半谷静香(対 島田沙和)は抑え込みで一本、52kg級では藤原由衣が残り50秒まで技あり、そのまま勝つかと思われたものの、そこから石井亜弧が一本で勝利、たった4分といえど、その中にドラマがある。63kg級細田園子対工藤博子では、工藤が開始5秒で一本。会場をどよめかせた。70kg級小川和紗対西村淳未、こちらも小川が開始10秒ほどで技あり。その後残り2分45秒で1本。
試合終わりの小川和紗選手、また所属企業の株式会社オー・エル・エムの方にも話を伺うことができた。
柔道自体は中学1年から、視覚障害者柔道に転向したのは、高校卒業後からだという。健常者の中で柔道を行う難しさを感じ、親と体育教員が新しい環境(視覚障害者柔道)を見つけてきてくれたのだそうだ。そして現在は社会人1年目、オー・エル・エム社には2018年5月から所属している。
所属企業の社員が試合に応援に来てくれ、声をかけてくれるのはホッとするという。また、小川選手にとってアスリートとして所属している企業ではあるものの、選手としての相談がしやすい環境も自分にとってプラスに働いているとのこと。
「普段はほっこりとした感じなのに試合になると違う一面が見れ、また応援に来たい!と思います。試合に応援に来ることで彼女の魅力がより一層感じられます。」「彼女のスピード感と迫力に圧倒されました。普段とは異なる面(ギャップ)が見られ、また会場に足を運びたいですね。」など、アスリートからも所属企業(社員)にとって良い循環を生み出していると感じられた。何より取材をしている時の選手の笑顔と社員たちの笑顔がそれを物語っている。
試合に関して小川選手は「本日の試合内容としては、思うようなことができず正直あまり良くなかったが、ただ逆に考えれば改善点が明確になった試合でもあるため、またそれを生かしていきたいですね。」と非常に前向き。目指すのはもちろん2年後の東京大会での金メダル。

来年(2019年)6月までに行われる、国際大会の日本代表候補選手も発表。小川選手も第一候補として指名を受けた。視覚障害者柔道の国内大会は実は数が多くなく、1年の中でも数えるほどである。その貴重な数少ない大会に、企業からも社員が応援に来てくれるのは、選手にとって非常にプラスに働くに違いない。