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「リズムと呼吸、背中から感じる力強い風」日本パラローイング協会練習会

2015.11.07

紅葉が見頃となった11月上旬、神奈川県相模原市の相模湖で行われたパラローイング協会の練習会にお邪魔した。甲府行きの中央線車内は登山客や紅葉見物の客でいっぱいだ。

「パラローイング」とは障がい者のボート競技を意味し、パラリンピックの公式競技にもなっている。
練習会には身体障がいの選手と知的障がいの選手が参加していた。
通常のボートは座面が前後に動く構造になっており、オールを持って膝の曲げ伸ばしをしながらボートを漕ぐのだが、パラローイングの場合、下肢に障がいのある選手は膝の曲げ伸ばしができないため、座面は固定されている。またバランスをしっかりと保つことができるよう、足は靴ごとしっかりとフットレストに取り付け、膝や腰の部分をマジックテープのついたベルトで固定をする。

義足の選手は生活用の義足とボート用の義足とを使い分けていた。ボートに適した長さに義足を調整しているのだ。
パラローイングでは自立歩行ができない車椅子使用の選手は一人漕ぎ、義足をつけた選手はペアなど障がいによって出場区分が決まっている。

練習会場の相模湖は直線2,000mのコースで、選手達はタオルや飲み物をボートに積んで湖へ出て行く。一度湖に出ると約一時間は陸へ戻ってこない。
練習会に参加している選手の中には国際大会に出場経験者も複数参加しており、数名の選手に話を聞くことができた。

○有吉 利枝 さん(神奈川県) ※トップ写真右
パラローイング歴:1年
大会出場歴:国際大会ペアで出場-銀メダル獲得(ペアは駒﨑選手)
「以前はセーリングをしていました、元々汗を流すことが好きでいろんなスポーツをしている中で知り合いに誘われたのがきっかけでボートを始めました。今は来年イタリアで開催される国際大会出場しリオデジャネイロパラリンピック出場権獲得が目標です。」
受傷前から様々なスポーツに取り組んできた有吉さんは、水上でのトレーニング以外の日は筋力トレーニングに打ち込んでいる。

○駒﨑 茂 さん(茨城県) ※トップ写真左
パラローイング歴:3年
大会出場歴:国際大会ペアで出場-銀メダル獲得(ペアは有吉選手)
「ボートを始めて今年で3年目になります。昔からずっと水泳も行っています。後ろ向きに進んでいく競技は少なく、同じ障がいをもった人にこんなこともできるという選択肢を増やしてほしいと思っています。」
駒﨑さんはチャレンジド・アスリートとしての経歴が長く、チャレンジド・スポーツの良さを語る言葉に深い思い入れを感じる。

○大竹 麻里 さん(東京都)
パラローイング歴5年
大会出場歴:2012年ロンドンパラリンピックにシングルで出場
「ボートは知り合いに誘われたのがきっかけで始めました。それまでは水泳をしていたのですが今はボートメインで活動しています。ボートを漕いでいるときは無心ですね。」
大竹さんがボートを漕ぐ姿と集中した眼差しは、言葉以上にアスリートとしての風格を感じる。
日本には相模湖だけでなく、琵琶湖や諏訪湖など、パラローイングの練習場所が複数ある。
日本パラローイング協会の練習会は和気藹々とした雰囲気でチームワークも良く、とても爽やかな印象を受けた。
湖面から見る山々は陸とはまた違った景色に見える。パラローイングも含めて自然と対峙するスポーツは、雄大な自然もまた楽しさを増幅させる一つの要素となる。
2020年東京パラリンピックはどんな景色になるのだろうか、という想像がふと頭をよぎった。

来年4月にはリオデジャネイロパラリンピック出場権をかけた「パラローイング大会イタリア2016」が開催される。日本チームの活躍に今後も期待したい。