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「どんな壁も仲間と共に乗り越える」NPO法人モンキーマジック

2015.11.14

11月14日(土)東京都町田市にあるクライミングジムNOSE町田店で、NPO法人モンキーマジック設立10周年イベントが開催された。
NPO法人モンキーマジックは視覚障害者のクライミングの普及を目的として活動を始めた団体で、代表の小林さん自身も視覚に障害がある。
10年経った現在では、視覚障害という枠組みだけではなく、障がいの有無に関係なく様々な人がクライミングを一緒に楽しめる取り組みを行っている。

10周年を記念したイベントでは「ペアで参戦!見ざるチャレンジクライミング」と題したクライミングコンペが行われた。

クライミングコンペは2人一組で行われる。一方がアイマスクをしてクライミングを行い、もう一方はアイマスクをしたクライマーの目となりホールドの位置を指示する。パートナーと協力しながらクライミングにチャレンジをするというコンペだ。
コンペは予選と決勝に分かれており、予選上位グループは「大ざるクラス」に、中位グループは「子ざるクラス」に分かれて決勝が行われる。
予選は10種類のルートにチャレンジをし、完登をするとポイントが与えられる。また、ボーナスと書かれたホールドを握るとボーナスポイントが与えられる。前・後半それぞれ60分で行われ、参加者はクライマーとナビゲーターの両方を交代して行う。2人の合計獲得ポイントで予選の順位を決定する。
参加者は全員クライミング経験のある人ばかりだが、コンペ開始直後クライマーもナビゲーターも困惑気味にスタート。「見えない」という条件でのクライミングがいかに難しいかを感じる。
困惑気味な雰囲気の中で、視覚障害の青年だけはスムーズに壁を登っていた。「見えない」という条件では普段から同じ条件でクライミングをしている人の方が有利なのだ。
ナビゲーターの指示に時間がかかっているとクライマーは体力を消耗して落下してしまう。
参加者たちは慣れてくるとホールドの位置や順番などのシュミレーションを行ってクライミングを行う前にイメージ作りをしていた。
聴覚障害の参加者は、アイマスクをつけると情報が耳からも目からも入ってこない状態になってしまうため、シュミレーションゴーグルという片目は見えず片目がすりガラスのように白濁したゴーグルをつけ、ナビゲーターがレーザーポインターで指示をするという方法でクライミングを行った。
予選が終了をした頃、どのペアもいつの間にか視覚障害のガイドができるようになっていた。「見ざるクライミング」が自然にユニバーサルな世界を作り上げているのだ。
決勝戦は予選の倍程度の高さの壁を使って行われた。5分間でどこまで登れるかを競うのだが、ロープを使った本格的な方式で、落ちた時点で終了となる。
「がんば!」という声援の中クライマーたちの挑戦がスタート。クライマーが完登をすると大きな拍手が会場を包んだ。
参加者たちは完登をみんなで喜び、失敗もみんなで悔しがる。会場はいつの間にか一体感が生まれていた。

設立当初からモンキーマジックの活動に参加している川嶋一広さん(視覚障害)にクライミングのおもしろさを聞いた。
(川嶋さん)
「クライミングは競い合う競技ではなく、自分の力が試される競技です。自分に負けないというところがすごくいいですね。モンキーマジックの活動は、ユニバーサルデザインの『誰でも使える』という考え方のように、老若男女、障害に関係なく誰もが参加できるというのがいいと思います。」

スポーツという広い枠組みで楽しめるクライミング。当たり前のユニバーサルな社会がここにはある。